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マイケル・マーシャル・スミス「みんな行ってしまう」の感想です。

マイケル・マーシャル・スミス「みんな行ってしまう」☆☆

みんな行ってしまう

フィリップ・K・ディック賞を受賞した怪作「オンリー・フォワード」を書いた鬼才の12篇のSFホラー短篇集です。


表題作「みんな行ってしまう」は味わいがあるというか、ちょっとブラッドベリっぽい印象を受ける作品です。そう思って読むと、彼の作品はアップテンポのブラッドベリと言う雰囲気が感じられますね。

「地獄はみずから大きくなった」のナノテクがいつの間にやらオカルトっぽくなるあたりや、「猫を描いた男」のダールっぽい情緒、「見知らぬ旧知」のおかしな不気味さ、「ワンダー・ワールドの驚異」の皮肉など、ユニークで面白い作品が多いです。

ただ何となくこの作家は長編作家という気がします。

特にSF作品では奇想天外でマンガチックな世界が広がり、読んでいくうちにその世界に入り込んでしまい、突然舞台が変わっても違和感なくついていける。これは長編だからこそ出来る技という気がします。

短編だと彼の世界に馴染む前に話が終わってしまうように思えて少し残念。