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辻村深月「かがみの孤城」の感想です。

辻村深月「かがみの孤城」☆☆☆

かがみの孤城

学区内で一番大きな雪科第五中学に進学した安西こころは、クラスのボス的な女生徒に一方的に敵視され、いじめに会い、不登校になり、そして家から出ることすら難しい精神状態に陥る。

両親の勧めもあって不登校の子供が通うフリースクールの見学をしたこころはスクールに行くことを決めるが、初日の朝にお腹が痛くなり、それを仮病ではないかと疑う母親の態度にも傷つく。

誰にも分かってもらえない、自分でもなんとかしなくちゃと思うのに何もできない、気持ちが落ち込むこころだったが、その日の夕方、こころの部屋の姿見が突然光りだし、鏡面に触れたこころは鏡の中の引き込まれてしまう。

鏡の中には城があり、キレイなドレスを着て狼の面をつけた不思議な少女が、こころを含めた7人の中学生に願いの部屋の鍵探しゲームをするように言った。

城の奥には誰も入れない願いの部屋があり、その部屋に入る鍵を見つけた一人だけが願いを一つだけ叶えてもらえる。各自の鏡からこの城の中に入れるのは午前九時から午後五時までで、ゲームの期間は来年の3月30日まで。鍵が見つかればゲームは終了し、この城にはもう入れない。この城に来るか来ないかは自由で、9時から5時の間であれば好きなときに来て好きなときに帰れば良い。

7人の中学生は奇妙な状況に戸惑いながら鍵探しゲームを始める。


それぞれ異なった事情がある中学生が鏡の中にある城を訪れ、お互いの距離感を測りながら一緒にいるうちに、それぞれの閉塞された状況から少しだけ歩み始めるというようなファンタジックな青春小説です。

基本的な視線は主人公であるこころのものですが、物語が進むうちに現実世界でそれぞれが置かれた状況が明かされていき、全ての問題が解決するわけではありませんが、よく考えられた展開で救いがある物語になっています

こころの問題はいじめが発端ですが、集められた少年少女たちの問題にはもっと厳しいものがあり、こころは手を差し伸べてくれる人がいる自分の状況を客観的に見つめて、気持ちに変化が生まれ、救われる人と救う人との繋がりが生まれます。

そういう物語をファンタジィの形で描いたところがこの作品の素晴らしい点ですね。面白かったです。