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辻村深月「ツナグ」の感想です。

辻村深月「ツナグ」☆☆

ツナグ

死者と生者を一度だけ会わせてくれるという「使者(ツナグ)」を主題にした、第32回(2011年)の吉川英治文学新人賞受賞のファンタジックでハートフルな連作短編集です。

「アイドルの心得」
子供の頃から出来た兄の影に隠れ、内向的で友人もいないOL平瀬愛美は、歯に衣着せぬ発言で人気がありながら、謎の突然死を遂げたキャバ嬢出身のアイドルに会いたいと言う。

「長男の心得」
小さな工務店の社長・畠田靖彦は、2年前にガンで死んだ母親に聞きたいことがあった。

「親友の心得」
仲違いした親友を事故で亡くした女子高生・嵐美砂には、死んだ御園奈津にどうしても会いたい理由があった。

「待ち人の心得」
婚約者の日向キラリが突然失踪してから7年、未だにその事実が信じられない土屋功一はキラリの所在が知りたかった。

「使者の心得」
祖母から「使者(ツナグ)」の役割を譲りたいと言われた高校生・渋谷歩美は、死者と一度だけ再会出来るという話に、「使者」を引き継ぐ前に亡くなった両親のどちらかと会うべきか悩む。


一つ一つのエピソードは独立していますし、必ずしも幸せを予感させるものではありませんが、4篇の物語が最終章の「使者の心得」でまとまって、未来につながっていく事を感じさせる構成は中々良かったと思います。

感涙するような話ではありませんでしたが、面白い作品でした。