椎名誠「さらば国分寺書店のオババ」☆☆
まだJRではなく国鉄と呼ばれていた時代に書かれたエッセイ。
制服を着ている人に反感を感じるという著者が、好き勝手な事を書き連ねたデビュー作になります。
夜分に無灯火で自転車を漕いでいた著者を注意した警官や、彼が密かに国分寺書店のオババと呼んでいる古本店の女主人について、けっこう辛口な態度というか、常識ある大人からみれば理不尽とも思えるような感想を書いています。
今の時代ではこんな書き方は中々出来ないなぁと思いながら読んでいましたが、これが実は伏線だったのですね。
こういう書き方から始まって、最後に書かれている結論めいたものは、やはり至極真っ当なもので、そこに至るまでの、いいかげんな駄文を書いているようでありながら、緻密な計算がなされているような文章が案外と効果的という印象です。
当時の風景が少し懐かしいというのもありますし、ユーモラスな場面場面が中々面白いエッセイですが、円熟味の増した椎名作品から読み始めた管理人には、少し物足りなさも感じられました。