面白い本を探す

佐藤雅美「啓順」シリーズの感想です。

佐藤雅美「啓順」シリーズ☆☆☆

「啓順」シリーズ

江戸でも3本の指に入るという町医者の内弟子で腕の良い医者だったのに、つまらない事から博打打ちに身を落とし、義理と誤算から仕方なく凶状持ちとなって江戸を落ちた啓順。

その啓順をしつこく追いまわすのは、江戸の顔役で町火消し十番組の頭取の聖天松五郎。

それもそのはず、啓順が凶状持ちとなったのは、松五郎の息子を殺した嫌疑をかけられたからだった。

密かに隠れている先々で、やめとくべきだと思いながらも、持って生まれた性格から病人の治療をしてしまう啓順。

結局地元でそれが評判になり、啓順を追う松五郎の手下に見つかって、ぎりぎりのところで逃げ回る。


リチャード・キンブル、職業医師・・・というナレーションから始まる、妻殺しの容疑者として警察に逮捕されたものの脱走し、真犯人を追いながら流れ着いた土地土地でおせっかいを焼いてしまい正体が明かされそうになる往年のアメリカの人気TVドラマ「逃亡者」を思わせるような時代小説版の「逃亡者」で、啓順が隠れる江戸時代の地方の描写もなかなか風情があります。

第一作目の「立場茶屋の女」を読むとまるで映画「シェーン」を観ているような感じを受けますが、シリーズ途中までの作品はパターンがある程度決まっています。

たいていは、聖天松五郎の手下の目をくらまして、地方に隠れ住むのですが、ひょんなことから病人や怪我人の手当をする羽目になり、それが追手の目に止まり、危ういところを地元の人間の助けを得てからくも逃げ延びるというような展開です。

何しろ松五郎は江戸のみならず、日本各地に兄弟分を持つような裏社会の大物ですから、どうしても見つかってしまいます。しかしながら松五郎に反感を抱くものもいるわけで、この辺りの人情の機微がなかなか面白いですね。

最後は大円団となる時代小説で、管理人はこういう物語は大好きです。

啓順シリーズを発展させたような「町医北村宗哲シリーズ」も面白い作品です。