宮部みゆき「理由」☆☆☆
バブル絶頂期の東京下町の荒川区に新たに建てられた超高級マンション「ヴァンダール千住北ニューシティ」は、バブルの崩壊による資産価値の下落とともに様々な人間ドラマを生み出した。
強風と大雨の降るある夜、ウエストタワー12階に住む少女が窓の外を人が落ちていくのを目撃する。
若い男性の死体が見つかるが、彼がどの部屋の住人なのか管理人も把握できずにいたところ、25階から転落したらしいことが分かる。
警察と管理人が25階を調べるうちに、中年の男女と老女が殺害されている部屋を発見するが、その部屋は中学生の少年とその両親の3人家族が住んでいるはずで、殺害された人たちの身元も何故ここにいたのかの事情も分からない。
果たして、この事件の真相は・・・?
ドキュメンタリーのような手法で描かれた社会派ミステリィです。
明確な主人公というのは存在せず、群像劇のように様々な人物の物語をなぞって、ストーリーが進んでいきます。
複雑に絡み合った歯車がピタッと嵌って起きた悲劇的な事件。どこか一つでもズレていたら起こらなかったであろう事件が見事に描かれていき、やっぱり宮部みゆきは達者な作家だなぁと改めて感服しました。
登場人物を一人ひとり丹念に描き、様々な家族のあり方やその成り立ちまでを描いて、それぞれ別の小説に出来るんじゃないかと思わせるような技巧がすごいと思います。
単純な謎解きミステリィに留まらない色々な人間ドラマは、共感出来る時もあれば、そうなるかなぁと思う時もありましたけど、とても興味深く面白かったです。