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宮部みゆき「龍は眠る」の感想です。

宮部みゆき「龍は眠る」☆☆☆

龍は眠る

嵐の夜、雑誌記者の高坂昭吾は自転車をパンクさせ雨に濡れていた少年・稲村慎司をクルマに乗せた。

クルマの中で慎司は自分は超能力者であると告げ、二人が走行中に遭遇した子供がマンホールに落ちた事件の犯人像を話す。

その後、独自に調査を進めた高坂が慎司の話を信じ始めた頃、慎司の従兄だという少年・織田直也が高坂の前に現れ、慎司が話したことはデタラメでトリックがあると語り出す。


第45回(1992年)の日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞候補にもなった超能力を持つ少年たちの苦悩を描いた作品です。

超能力者。普通の人間には持てない強い力の持ち主。正直言えば、超能力を持てるものなら持ちたいと思う人が殆どではないかと思います。

かく言う管理人も子供の頃には超能力者に憧れたものです。

しかしこの作品では人の心を読める力を持つ少年の悲哀を鋭く描いています。

確かに冷静に考えれば他人の気持ちを感じてしまう能力など苦痛かもしれない。

二人の少年は、方向性は少し違っていても気持ちが真直ぐで考え方もキチンとしているので、ますます他人の声など聞きたくないのでしょうが、もし彼らに良心がなく自分の能力を悪用するとしたら、どんな風に感じるのでしょうか。

なかなか奥の深いテーマをミステリィ仕立てにして描いた作品で、宮部みゆきらしいスッキリとした構成が本当に見事な作品です。

管理人から見れば純真すぎる登場人物にも然程違和感を感じずにサクサク読めます。

管理人が宮部みゆきを最初に読んだのは、この作品か「魔術はささやく」かハッキリ覚えていないのですけど、すごい才能の作家が出てきたものだと思った事は覚えています。

全くその通りで彼女の作品にハズレは殆ど有りませんね。