万城目学「鹿男あをによし」☆☆☆
恩師の大学教授から「君は神経衰弱だ」と言われている「おれ」は、准教授を目指している「おれ」と仲の悪い後輩の助手の研究の為に実験用具を使わせてあげてくれと頼まれ、教授からの勧めで期間限定の教師になった。
箱根から西に行ったことのないのに、なんと教授の知人が経営する奈良の女子高の教師だと言う。
下宿先も決まり、2学期の間だけ授業を受け持つ奈良女学館の1-Aの担任となったが、いきなり遅刻してきた生徒・堀田イトに理由を問いただしたところ、乗ってきた鹿が駐車違反で云々と理由のわからない言い訳をして、奈良では鹿に人が乗るのは普通だとまで言いだす。
からかわれて怒った「おれ」は、なんとなく生徒たち、特に堀田イトとうまくいかずに悩むが、そんな時に奈良公園の牝鹿から突然話しかけられた。
鹿が言うには、「おれ」は1800年前から人間を守りつづけてきた目を運ぶ役に選ばれた者で、狐の「使い番」から目を受け取って鹿に渡さないといけないらしいが、たいそう重大な役目の割には、鹿は「使い番」に会えば分かるというだけで細かいことを説明してくれない。
大地震を引き起こす大なまずを抑えると聞かされても半信半疑だが、折しも富士山は噴火する兆候を現していた。
はじめは何やら夏目漱石の「坊っちゃん」のような語り口で始まる、のんびりした物語かと思っていましたが、ユニークな雰囲気のファンタジィが展開されていて、思わず笑ってしまいました。
大災害が起こるかもしれないという設定なのに、切迫感が全く感じられないところが素敵です。
不思議な話なのに、ふわっとした印象で、登場人物も尖っていなくて、こういう作品は貴重ですね。面白かったです。