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リサ・クレイパス「夢を見ること」の感想です。

リサ・クレイパス「夢を見ること」☆☆☆

夢を見ること

優しいメキシコ人の父親と気性の激しい金髪美人の母親との間に生まれたリバティは、黒髪でメガネをかけた大人しくて目立たないヒスパニックの少女。父親が亡くなった事で、母親と二人テキサスの田舎町のトレーラー・ハウスで暮らすようになる。

トレーラーパークの生活に慣れないリバティだったが、同じトレーラーパークに住む少年ハーディがリバティの事を気にかけ守ってくれ、徐々にここでの生活にも馴染んでくる。

そんなリバティは成長するにつれ、逞しくて頼り甲斐のあるハーディに憧れ恋するようになるが、貧しい生活を忌み嫌うハーディにはトレーラーパークを出て金持ちになるという野望があり、美しい娘に成長したリバティの事を気にしながらも、ここに残る理由は作りたくないとリバティから距離を置いている。

そんなハーディの気持ちが理解できるだけに、リバティも恋人になることは諦めていた。

そんな中でリバティに妹が生まれる。

姉妹が欲しかったリバティは私生児の妹を自分の子供のように可愛がるが、ある日ハーディが町を出ていき、その直後に母親が交通事故で突然亡くなってしまう。

幼い妹と二人で取り残されたリバティ。何かあると必ず助けてくれたハーディはもういない。

自分の力で生きていこうとリバティは奨学金を受けて美容師になり、ヒューストンの超一流店で働くようになるが、そこで出会ったのが大富豪のチャーチル・トラヴィスだった。

何故かリバティを気に入ったチャーチルはリバティを彼の個人秘書として雇い、リバティと妹を彼の屋敷に迎い入れる。

しかしチャーチルの長男ゲイジは、妻を亡くしたチャーチルが若い娘を家に連れ込んだ事が気に入らない。

何とかしてリバティを追いだそうと企むゲイジだったが、いつしか心優しいリバティに惹かれだしていく。


貧しい混血女性の半生記のような感じで展開する、主人公リバティの一人称で描かれたロマンス小説ですが、単純にロマンス小説と言い切れない作品です。

物語の前半は殆どがトレーラーパークで暮らすアメリカの底辺の社会や貧しいリバティの日々が描かれていて、平凡なヒスパニックの少女が美しい女性に変貌していく成長物語はロマンス小説という気がしません。

後半になってからは、幼い妹を抱えて健気に生きるリバティと大富豪の息子ゲイジとのロマンス、それに出世した幼馴染のハーディが絡んできてロマンス小説っぽくなります。

愛している恋人だけど身分違いのゲイジ、リバティと同じ環境で育ち共有するものを多く持っている憧れの人ハーディ、二人の男性の間で揺れ動く女心を描いてなかなか奥行きがある作品です。

但し単純なロマンス小説を読みたい人には向いていないかも知れません。