面白い本を探す

ロレッタ・チェイス「悪の華にくちづけを」の感想です。

ロレッタ・チェイス「悪の華にくちづけを」☆☆☆

悪の華にくちづけを

輝くばかりの美貌を持ちながら心を奪われる男性に巡りあえず、27歳の今日に至るまで独身を通してきたイギリスの準男爵の娘ジェシカは、パリにいる弟バーティが、ろくでなしの遊び人だと悪名が高い資産家デイン侯爵の仲間に加わって、酒と賭博と娼婦に溺れ、準男爵家の財政が危機に陥る寸前との知らせを受ける。

弟を連れ戻す積りで祖母と二人パリに乗りこんだジェシカだったが、彼女の前に現われた男らしいデイン侯爵をひと目見て心を奪われてしまう。

一方、冷徹な男と自他共に認める偉丈夫のデインも、ジェシカの容姿や物怖じしない毅然とした態度に強く惹かれてしまう。

デインに好意を示すジェシカだが、しかしデインは見かけと違って強いコンプレックスを持つ男で、自分の気持ちを素直に現すことが出来ない。


子供の頃のデインは、か細い体に個性的な容貌を父に疎まれ、デインに愛情を注いでくれた優しい母は彼が8歳の時に駆け落ちした挙句に異国で病死し、寄宿舎のある学校では苛め抜かれて、いつしか力こそ正義だと思い込み荒れた生活をするようになる。

そんなデインも成長するに従って、ひ弱な少年から逞しい偉丈夫に変わったが、内面は傷つきやすい子供のままで、表には出さないものの何ごともネガティブに受け取ってしまうひねくれ者だった。

コンプレックスを隠すかのように強がる姿が、なにやら少々情けない感じの主人公デインです。

それに比べると、天然ぼけのヒロイン・ジェシカは常に明るく前向きで、いわゆる「男気」のある性格で、誰もが恐れるデインに真正面から向き合います。

自分は誰からも愛される事はないと思い込んでいる男と、そんな男を愛してしまった一途な女性の愛を描いた、全体的にユーモラスで明るい雰囲気のRITA賞受賞のヒストリカル・ロマンスです。