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山手樹一郎「江戸の朝風」の感想です。

山手樹一郎「江戸の朝風」☆☆☆

江戸の朝風

10年前、家老の娘との結婚が決まった西国某藩の前途有望な藩士・黒潮太郎は、藩船で荷物を江戸に運ぶ途中で大嵐に会い、彼の幸運を妬み横取りしようと考えた友人に海に突き落とされてしまった。

しかし板切れに捕まって黒潮に流されているうちに、禁制の南蛮からの抜け荷をしている海賊船に救われ、彼らの仲間になる。

それ以来命知らずの海賊として暴れまわっていたが、ある時大暴風雨にあって船は難破、太郎は7人の仲間と共に無人島に流れ着いたが、そこで仲間たちは一人、又一人と亡くなっていき、救助された時に生き延びていたのは黒潮太郎ただ一人だった。

無人島には難破船のお宝が眠っている。

仲間たちは死ぬ前に、それぞれの思いを太郎に託した。

仲間たちに頼まれた人探しをするため江戸に出た太郎は、たまたま知り合った遊び人のおとぼけ仙太と、美貌の女占い師・天明堂白蘭の手を借りて、7人の行方を探すのだが・・・。


山手樹一郎らしい人情味のある明るい時代小説です。

偶然が重なるご都合主義だし、お天道様は見ているという類の勧善懲悪の物語ですけど、気が強くてヤキモチ焼きな天明堂白蘭や慌て者のおとぼけ仙太など、山手文学によくいる脇役たちも揃って安心して読める作品です。

山手樹一郎作品の主人公には、悪人なんて放っておけば自滅するんだと深追いしない人物が多いのですが、黒潮太郎にはもっと毅然とした所があって、許さんと成敗するあたりがスッキリします。それでいて死人は殆ど出ませんしね。


この小説は若かりし頃に何度か読んで、最近久しぶりに読み返したのですけど、変なストレスが溜まらず、やっぱり面白かったです。