高野和明「13階段」☆☆
第47回江戸川乱歩賞受賞作です。
元刑務官の南郷正二と傷害致死で懲役刑を受けた三上純一の二人が、死刑判決を受け今にも執行されようとしている死刑囚・樹原亮の冤罪を晴らすために調査に乗り出す、というのがメインのミステリィです。
ミステリィの要素もさりながら、死刑制度の是非や罪と罰についての考察がさりげなくテーマとして織り込まれている作品です。
死刑制度は賛否両論それぞれに説得力があり、そう簡単に何が正しいなんて結論は出せないし、正解なんてないと思います。作者も明快な回答などは用意していません。
ただこの作品の中で南郷が考えるように、被害者側の厳罰を求める感情や、更正の見込みがない犯人の場合には、死刑も仕方がないのではと管理人は考えます。
しかし、例えば10人くらいの人を殺めた凶悪犯であっても、心底罪を悔い改めたとしたら、そして被害者の遺族が死刑を望まないとしたら、そういう場合には死刑執行は取りやめるべきなのか・・・。
終身刑ならいざ知らず、有期刑で社会に復帰させることが果たして公平な刑罰なのだろうか?という気がしますが、反面贖罪に一生を捧げる人に対して死刑執行が本当に正義なのか?とも考えてしまいます。
本来罪と罰は見合っているべきだと思いますが、明確な線引は難しい。
もっとも自分の犯した罪を心底から悔い改め、贖罪する犯罪者は極めてまれで、死刑囚は実際には更正が難しい人が多いような気はしますが・・・。
先進国では死刑制度を廃止する国が増えているようです。
それでも死刑制度は存続させるべきだというのが管理人の意見ですが、絶対に意見が変わらない自信はないですね。
まぁ、そんな事を考えさせてくれる作品でしたが、ミステリィとしての出来栄えは今ひとつという印象でした。