中島京子「かたづの!」☆☆

かたづの!

八戸南部氏の姫・祢々の江戸時代で唯一の女大名として生きてきた波乱万丈の生涯を、一本角の羚羊=片角(かたづの)の目を通して描いた歴史小説で、第28回柴田錬三郎賞、第4回歴史時代作家クラブ賞を受賞したファンタジックな物語です。


八戸南部氏の20代当主・八戸直政の妻・祢々は、15歳の時に狩場で角が一つしかない羚羊と出会う。

祢々は羚羊を射んとする直政を止めて羚羊の命を救い、羚羊と祢々の間には不思議な繋がりが出来るが、歳を重ねて羚羊は命が尽き、形見である一本の角を祢々は大切にしていた。

時代は関が原の合戦から徳川の世が始まる頃で、南部では領地を巡る複雑な思惑が絡み、南部の宗主で祢々の叔父でもある三戸南部氏・利直は謀略好きで権勢欲の強い男であり、八戸の領地も自らの手にしたいと考えていた。

利直に従って江戸に出た夫・直政とまだ2歳の嫡男・久松が立て続けに不審死したことから八戸の当主となった祢々は、次々と降りかかる困難に知恵を絞って立ち向かうのだが・・・。


史実に基づいた女大名の奮闘を描きながら、意識を持つようになった羚羊の角や絵の中の怪鳥、それに河童などが登場する不思議な雰囲気の時代小説です。

優れた主人公の姫が、物ごとを快刀乱麻に解決してお家を守り抜く、というような話ではなく、無理難題に深く悩み、時には怒りを表に出しながらも、自分の意に沿わないことでも冷静沈着に対処して、何とか無難に切り抜けていくというような話に説得力があります。

更にそうした殺伐となりがちなリアリティのある世界に、河童や秘宝・かたづのなどの怪異の要素を組み合わせて、どこか物語を柔らかな作品に仕上げているところが新しい感じです。

始めのうちは少しとっつきにくい印象でしたが、物語が進むにつれて止まらなくなるような作品でした。



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