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東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」の感想です。

東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」☆☆

カッコウの卵は誰のもの

アルペンスキーの元オリンピック選手・緋田宏昌の一人娘・風美は、将来はメダルを狙えるような有望なスキーヤーに育ち、スポーツジムや健康食品なども扱う大手企業・新世開発のスキー部でトレーニングを重ね、ワールドカップでの上位入賞を狙っていた。

そんなある日、宏昌の元を新世開発スポーツ科学研究所の副所長・柚木洋輔が訪れ、緋田父娘の遺伝子調査に協力して欲しいと依頼してくる。

柚木によれば、特定の遺伝子を組み合わせたパターンを持つ人間の運動能力は極めて優れているのだが、そうしたパターンを持つ選手は非常に数が少なく、たまたま緋田風美の遺伝子がそれに該当しているという。

そこで、そうした遺伝子を持つ人間の両親が、どういった遺伝子なのか研究したいという話だった。

緋田はスポーツ選手に必要なのは努力であり、遺伝子など何の関係もないとして調査協力を断るが、実は緋田には協力できない理由があった。

緋田の最愛の娘風美は、流産した彼の妻が産院から新生児を攫って来て、実の娘と偽って育ててきた子だった。

妻が自殺した後にその事実を知った緋田は、一人苦悩しながら風美を育て、いつかは真相を告白しなくてはならないと思いながら、それを果たせずにいたのだ。

そうとは知らない柚木は、どうすれば緋田を説得できるか頭を悩ませていたが、そんな中で新世開発に対し、風美にスキー大会の出場を辞退させろという脅迫状が届く。


人間の持って生まれた能力と遺伝の関係、優れた能力を持つことと自分が本当にやりたいことの関係、親子や家族についてなどをテーマにしたミステリィです。

驚くようなトリックはなく、漠然と思っていたような展開ですけど、やはり東野圭吾は読ませる作家ですね。サクサクと読んでしまいます。

色々と分かってみると、緋田の奥さんが自殺した理由が今ひとつ弱いような気もしますが、楽しめる作品でした。