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東野圭吾「虚ろな十字架」の感想です。

東野圭吾「虚ろな十字架」☆☆☆

虚ろな十字架

ペット専門の葬儀社を経営する中原道正は、11年前に小2の娘を強盗に殺害された過去を持っていた。

妻・小夜子が買い物に出かけた隙に、殺人罪で服役中に仮出所した男が盗みに入り、家から4万円を盗んで目撃者の娘を絞殺した。

悲嘆に暮れた夫婦は犯人の極刑を望み、2審で死刑判決が決まったが、娘を失った心の隙間は埋めようもなく、つらい過去に耐えきれずに二人は離婚した。

以来、お互いに連絡を取ることもなく暮らしてきたが、ある日道正の前に11年前の事件を担当していた刑事・佐山が訪れ、道正の元妻・小夜子が強盗目的の老人に刺殺されたことを告げる。

小夜子の通夜に出た道正は、そこで小夜子の友人で編集者の日山千鶴子と出会い、小夜子がルポライターとして活動し、さらに犯罪被害者遺族の会に入って死刑廃止反対を訴えていた事を知る。

離婚後、時間が止まってしまったような自分と比べて、気持ちを切り替えて前に進もうとしていた小夜子を知り、道正は事件を自分なりに調べ始めるのだが・・・。


罪と罰、贖罪、正義とは、死刑制度などについて色々と考えさせられる、東野圭吾らしいミステリィでした。

主題と構成は見事ですけど、しかしトリックや謎解きを過度に期待すると裏切られるかもしれません。

人が人を裁くこと、国が被害者に変わって加害者に死をもたらすことの是非、明確な解答はなく、それぞれが置かれた立場や状況によって考え方も変わるかもしれない難しい問題。こういう重たいテーマを背負いながら、物語はスピーディーで気持ちが暗く沈むような事もありません。

自己主張が強くない分、素直に考えを巡らすことが出来ますが、しかし結論は出せない。

管理人はこの小説を読みだしたら、止まらなくなりました。面白かったです。