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東野圭吾「ラプラスの魔女」の感想です。

東野圭吾「ラプラスの魔女」☆☆

ラプラスの魔女

鄙びた温泉宿に親子ほどに歳の離れた夫婦が泊まりに来た。

夫の水城義郎は敏腕の映像プロデューサー、妻の千佐都は元銀座のホステス。妻の勧めで秘湯だと言うこの温泉にやって来たとの事。

夫婦で名所の滝を観に行くと出かけた夫婦だが、妻が忘れ物を取りに旅館に戻っている間に、夫の義郎が硫化水素ガスで事故死をした。

何らかの理由で火山ガスが発生して、運悪くその場にいた義郎が犠牲になったらしい。

それからしばらくして、別の温泉地でも同じように硫化水素による死亡事故が発生し、その双方の事故調査を依頼された地球化学の専門家・青江は、両方の現場で若い女性が人探しをしているのを目撃する。

一方、水城義郎が事故死した事件は、遺産目当ての妻が何らかの方法で実行した殺人事件ではないかと疑い、調査を開始した刑事がいた。


不可解な硫化水素ガスによる事故死と、それを調査する刑事・中岡、事故の原因に疑問を抱く大学教授・青江、奇妙な能力を使う謎めいた若い女性・羽原円華などが中心になって展開していくサスペンス・ミステリィです。

タイトルからして、全ての原子の位置と運動量が分かる存在(ラプラスの悪魔)がいれば、その存在は全ての結果を予測できるとしたフランスの数学者ラプラスの主張をモチーフにしていることは予想できます。

確かにそういった能力を身に着けた人間が登場しますが、その能力に関わる物語というよりも、一つの家族の謎を追うミステリィという要素のほうが強い印象です。

東野圭吾の作品らしく、読み始めると止まらなくなりますが、登場人物の描き方が些か散漫すぎたようで、テーマが立派な割には読後感に余韻というか残るものがあまりなかった気がします。