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東野圭吾「プラチナデータ」の感想です。

東野圭吾「プラチナデータ」☆☆☆

プラチナデータ

ラブホテルで女子大生が殺害される事件が発生、捜査を担当する警視庁捜査一課の刑事・浅間は、上司からの指示でホテルに残された犯人のものと思われる体毛を持って、警察庁の特殊解析研究所に向かう。

そこではDNA解析を使用した画期的なDNA検索システムが秘密裏に試験運用されていて、主任解析員の神楽龍平により犯人像が特定され、犯人のスピード逮捕に繋がった。

解析されたDNA情報から、データベース化された不特定多数の人間のDNAを検索して、犯人を特定するこのシステムを有効活用するには、多くの一般人のDNA情報を集めていかなくてはならない。

そのための法制化が検討され、プライバシーとの兼ね合いで問題視されたものの、最終的に法案は通り、DNA検索システムによる犯罪捜査がスタートする。

DNAを入手すれば犯人像がかなりの確率で特定されるため検挙率は大幅に上がり、警察の捜査も変わっていくが、そうした中で新たに発生した連続婦女暴行殺人事件は、被害者の体内から犯人の精液が発見されているにも係わらず、DNA検索システムは犯人が特定できないとアラームを挙げた。

神楽はシステムを設計した天才数学者・蓼科早樹とその兄・耕作に呼ばれ、彼らが生活する新世紀大学病院に向かうが、あろうことか隔離された病室で蓼科兄妹は殺害され、犯人が残したDNAデータを解析した神楽は、その解析結果が示した犯人像が神楽のものであることを知る。


DNA情報により犯罪捜査が画期的に進んだ社会で起こる事件を描いたサスペンス・ミステリィです。

主人公の神楽龍平はDNAを知れば全てを知ることが出来ると考える理知的で合理性を重んじる人物ですが、実は治療中の多重人格者で、別人格のリュウが蓼科兄妹を殺害したのではないかという疑いを捨てきれない。

しかし警察に捕らわれれば真相解明が出来なくなると逃走します。

刑事の浅間は昔気質の警官で、DNA解析システムには疑問を抱いていますが、事情を知り尽くしているということで、上層部から詳しいことを知らされないまま神楽龍平の跡を追います。

そんな中で、なぜ連続婦女暴行殺人事件の犯人が特定できないのか、なぜ蓼科兄妹が殺害されなくてはならなかったのか、なぜ神楽龍平のDNAが蓼科兄妹殺害犯のものと一致するのか、といった謎解きが進みます。

色々と突っ込みどころもありそうですが、スピーディーに展開される物語に引き込まれてしまい、素直に楽しめました。