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ジェイン・アン・クレンツ「億千の愛の静寂に」の感想です。

ジェイン・アン・クレンツ「億千の愛の静寂に」☆☆

億千の愛の静寂に

飛行機の墜落事故で天才発明家の兄ダニエルが消息不明となり、ダニエルが経営するベンチャー企業が危機に陥ったことから、アニーは非情な経営者として名高い資産家のオリバー・レインの元を訪れた。

ダニエルの双肩にかかっていた会社は今や風前の灯。兄と結婚したばかりの義姉や彼女のお腹の中にいる子供のためにも、ダニエルが無事帰ってくるまで会社を潰すわけにはいかない。

しかし債権者も出資者もダニエルは死んだものと考え、会社を別の企業に譲り渡すべきだとアニーにプレッシャーをかけてくる。

こうした状況の中では、自分の力だけでは会社を救えないと覚悟したアニーは、家族経営の会社の経営を、出資者の一人で兄の友人でもあったオリバーに委ねるしかないと思いつめて、オリバーに便宜的な結婚を申し込んだ。

奇抜なアニーの提案を受けたオリバーは、意外なことにアニーの提案を二つ返事で受ける。

実はオリバーは、ダニエルの結婚式で出会ったアニーに強く惹かれていた。


現実には有りそうにないシチュエーション、人が良く極めて楽天的なヒロイン、他人に恐れられている謎めいたヒーロー、ジェイン・アン・クレンツ作品にお馴染みの登場人物が巻き起こす騒動が楽しいロマンチック・ミステリィです。

ただこの作品はミステリィという雰囲気があまり感じられないですけど・・・。

全てを自分の思う通りにするのが当然というオリバーが、人助けが大好きなアニーに調子を狂わされていくのが可笑しいです。

オリバーを尊敬しながらも、彼の言いなりになっていることに不平を抱いていたオリバーの家族が、アニーの口添えもあってそれぞれの生き方にチャレンジしていくように変わるのもお約束の展開です。

ジェイン・アン・クレンツ作品は殺人事件が起きても、どこか明るい雰囲気で、それでいて恋の馬鹿騒ぎ的な感じを受けないのが値打ちですね。