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ジェイン・アン・クレンツ「愛の遺産」の感想です。

ジェイン・アン・クレンツ「愛の遺産」☆☆☆

愛の遺産

海辺近くの小さなホテルを経営するクレオの前にマックスと言う名の男が現れる。

時折ホテルにやってきて雑務の手伝いをしてくれていた老人ジェイスンの友人だと名乗るマックスに、貧乏画家だというジェイスンを家族同然の人だと思っていたクレオは、マックスも同じように生活に困窮した画家仲間だと思い込み、早速水漏れの修理を頼み込む。

しかし実のところジェイスンは大きな不動産グループの敏腕経営者で、マックスはその片腕と目されていた人物だった。

ジェイスンが亡くなり、同族会社の経営権がジェイスンの弟に移った事でマックスは会社を辞め、ジェイスンがマックスに譲ると話した3枚の現代絵画を引き取るためクレオのホテルを訪れたところだった。

小さなホテルの女主人クレオを億万長者ジェイスンの愛人だと誤解しているマックスと、ジェイスンの事を売れない貧乏画家だと思い込んでいるクレオ。

お互いに一目見て惹かれ合うものを感じた二人だったが、そうした中で秘かに官能小説を書いたクレオに宛てて脅迫文が届き・・・。


ジェイン・アン・クレンツの初期のロマンチック・サスペンスです。

サスペンスといってもリアリティに欠ける釈然としない事件ですし、ゆったりと進む主人公二人のロマンスにも激しさがありません。

それでも少し変わり者の主人公たちを描きながら、クレンツ特有の世界に引き込んでいく辺りは流石という感じで、いわゆるハーレクインらしさを感じずに楽しめる作品です。

自分の心の秘めた部分を官能小説として発表し、好評を受けながら、小説の深い部分を理解してくれる人がいない事に不満を抱くクレオは、マックスがそうしたところまで理解してくれることに感動し、里親の元を転々として家族の愛を知らずに育ったマックスに愛を抱いていく。

一方愛に恵まれない人生を歩んできた孤独な男マックスも、クレオとその友人たちの中にいることで安らぎを感じ始め、クレオに強く惹かれてしまう。

そんな二人の恋の行方が興味深い、明るい雰囲気のロマンス小説で、そこにクレオの両親の不審死の謎を絡めて物語は展開します。

管理人はこういう作品が好きです。