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アイラ・レヴィン「死の接吻」の感想です。

アイラ・レヴィン「死の接吻」☆☆☆

死の接吻

自分の野心のため、青年は妊娠した恋人を事故に見せかけて殺害した。殺害された娘は裕福な家庭の3人姉妹の長女だった。

姉の死に疑問を抱いた次女は姉の事故死について調べ始めるが、真相を暴かれることを恐れた青年は、この妹にも魔手を伸ばす。


美しい容貌を持ちながら倫理観が欠如する青年を主人公にした、とても緊迫感のある本格的なミステリィです。

スタンダールの「赤と黒」でスキャンダラスに描かれた主人公ジュリアン・ソレルを彷彿させる犯人の人物像と、彼にアッサリと騙されてしまう女性たちが秀悦で、管理人が初めてこの作品を読んだ時には本当に驚きました。

3部構成の第1部は犯人である青年の立場から描かれた倒叙形式でありながら、本人についての記述がないため、犯人が誰だか読者には分からないように書かれています。

そのため2部・3部がどう展開するのか、どいつが悪人なのか判別がつかず、作品の中に引きこまれていきます。

正直言って今読むと微妙な古さを感じますが、それは仕方がないですよね。何しろ1952年の作品ですから・・。

当時23歳だったアイラ・レヴィンの処女作で、文章も何だか瑞々しい印象ですが、それでもどこか古典ミステリィの風格のようなものを感じさせる傑作だと思います。

この作品から15年経って「ローズマリーの赤ちゃん」を書いたアイラ・レヴィンは、寡作だけど天才だと思いますね。