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横山秀夫「半落ち」の感想です。

横山秀夫「半落ち」☆☆☆

半落ち

県警の幹部警察官・梶がアルツハイマーの妻を扼殺したとして自首してくる。

実直な警察官がアルツハイマーに悩み苦しむ妻からの頼みを断りきれずに犯した嘱託殺人事件で、犯行の動機から手口までを淡々と自供する梶。

しかし妻を殺害してから自首してくるまでの2日間の行動を梶は話そうとしない。


物語は主に梶の2日間の行動の謎解きを、事件と関係する警察官、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、看守などのそれぞれの立場から描いています。

2002年度の週刊文春ミステリーベスト10とこのミステリーがすごい!の1位の作品で、直木賞の候補作にもなりましたが、骨髄移植の部分が現実にはありえない設定だとの疑義が選考委員から提示された事もあって受賞はなりませんでした。(それだけが落選の理由ではないようですが)

ただ選考後に、この作品の世間からの高評価に対して林真理子氏が何やらミステリィ界や読者を貶すような事を書いたとかで、横山秀夫氏が直木賞と訣別宣言をする騒動になり、しかも直木賞選考委員会で問題視された致命的欠陥というのが実は間違いらしいということで、何やら直木賞の権威に疑問がついたというある意味問題作です。

人間の生き方を鋭く描いたヒューマン・ストーリーで、仮に直木賞の選考委員が指摘した事が事実であったとしても、別に作品そのものの評価とは関係しないような気がします。

ノンフィクションならともかく、この作品はフィクションです。しかも客観的な事実というよりも、梶がどう思って行動したかが重要な気がします。

何だか選考委員の方のご意見は言いがかりに近いように感じます。

しかし、そんな騒動を思いながら読まずとも、感動作であるのは間違いない。

ミステリィとして面白いかどうかは人それぞれですが、小説としての質は高いと思います。

管理人は少し泣けました。