上田秀人「百万石の留守居役」☆☆☆
四代将軍徳川家綱は病弱な上、後継ぎとなる息子もいなかった。次期将軍と目されていたのは、家綱の弟で館林藩主の徳川綱吉と甥の甲府藩主・徳川綱豊であったが、江戸幕府の実権を握る時の大老酒井忠清は、外様大名の加賀藩主前田綱紀を擁立しようと企む。
それを伝え聞いた加賀藩中では藩論が真っ二つに割れ、大老の意見を受け入れるような発言をした重臣前田直作は反対派に襲われ、たまたまその場に居合わせて前田直作の窮地を救った若き藩士・瀬能数馬は、藩内の抗争と天下の大騒動の渦中に巻き込まれていく。
第7回の吉川英治文庫賞を受賞した文庫本で全17巻の長編時代小説です。
なかなかに無理のある設定という感じがしますが、物語がどんどんと膨らんで、予想外の展開が繰り広げられていき、主人公は右往左往しながらも締めるところは締めて、楽しめる娯楽時代小説でした。
流石に江戸留守居役の慣習というのは、外交交渉の範囲を大きく超えていてあり得ないだろうと思いますし、加賀藩筆頭家老で主人公の舅になる策謀家の本多政長の立ち振舞は超人的過ぎますが、何があろうと切り抜けていくだろうと思わせる安心感があります。
娯楽時代小説はこうあるべきだと思いますね。
チャンバラ小説というよりも、策謀を巡らす権力者たちの争いが興味深く、そこに巻き込まれていく純朴な武士の行動に素直に好感を抱きました。