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奥田英朗「家日和」の感想です。

奥田英朗「家日和」☆☆☆

家日和

「サニーデイ」「ここが青山」「家(うち)においでよ」「グレープフルーツ・モンスター」「夫とカーテン」「妻と玄米御飯」の6編を収録した、色々な夫婦や家族の在り方や出来事をユーモラスに描いた短篇集です。


「サニーデイ」は、ネットオークションにハマった主婦が、不用品どころか夫の私物までも出品するようになってしまう騒動を描いた作品です。一種の依存症で現実にもありそうな話ですけど、どことなくカラッとした雰囲気が笑えます。

「ここが青山」は勤務先が倒産して主夫となった男性の物語。失業した夫の代わりに専業主婦だった妻が元の職場に復帰してバリバリ働き出し、夫はいつの間にやら専業主夫になるという逆転現象が可笑しいけど、でもこういう家庭もこれからの時代はアリという気がします。タイトルを見て、「ここがあおやま」ってトレンディ・ドラマか?と思いましたが、人間到る処青山あり (じんかん、いたるところせいざんあり)の青山でした。

「家においでよ」は、妻と別居した事から部屋を遠慮無く自分好みに変えていく夫の物語。妻にヘンに遠慮しない方が物事は上手く行くのかも知れません。楽しい雰囲気が味わえる佳作です。

「グレープフルーツ・モンスター」は、内職を斡旋する会社の若い担当者がつける柑橘系の香水から淫夢を見るようになった主婦を描いた作品。

「夫とカーテン」は夫が転職する毎にいい仕事をするようになるイラストレーターを描いた作品。

「妻と玄米御飯」はロハスにハマった妻をモデルにして小説を書いた作家の物語。


基本的にどの作品も夫婦・家庭の問題を描いていますけど、起こる出来事はおかしくて、全体的に温かい視線が心地よくて、管理人はこういう作品が大好きです。