奥田英朗「我が家の問題」☆☆☆
「甘い生活?」「ハズバンド」「絵里のエイプリル」「夫とUFO」「里帰り」「妻とマラソン」の6編を収録した、色々な夫婦と家族をユーモラスに描いた短篇集です。
「甘い生活?」は広告代理店に勤める新婚の男性が、世話焼き女房に感謝しながらも重荷に感じて、家に帰るのが辛くなる姿を描いています。
色々面倒をみてもらうのはウレシイし有難いし、出来た妻に文句はないのに、何だか気が引けてしまい、家に帰りたくなくなる男性の気持ち、少しだけ分かるような気がします。
「ハズバンド」は会社の球技大会で夫がどことなく軽んじられている様子を見て、ひょっとしたら自分の夫は仕事が出来ない男かもと気に悩む妻を描いています。
でも幸いなことに妻も別段出世志向でもないところが良いですね。管理人の家内もこんな風に感じているかも知れません。
「絵里のエイプリル」は両親が離婚するかも知れないと気づいた女子高生が、親友に悩みを打ち明けたり、学校内で離婚について調べたりする話。離婚がそれ程珍しくなくなった世相を感じました。
「夫とUFO」は仕事のストレスから突然「宇宙人と交信出来るようになった」と語り出した夫と、夫を気遣う妻の話。お父さんを取り戻すのよ、と子供たちに言いおいて夫を迎えに行く妻の姿が愛らしいです。
「里帰り」は札幌と名古屋出身の新婚夫婦の初めての帰省を面白く描いた作品で、お互いに相手方の実家が気に入るという展開が優しいです。
そして「妻とマラソン」は、ひょっとしたら作者の事?と思う流行作家の家族を描いています。
夫が売れ出してから何となく自分の居場所がなくなったように見える妻がジョギングにハマりだし、ついには東京マラソンに出場することになる。
家族揃って、そんな母さんを応援するという心温まる家族愛が良いですねぇ。
問題があって、必ずしも明快な解決がされるわけでもないけど、人生なかなか良いもんだと思わせてくれる作品が揃っています。こういう小説が管理人は好きです。