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有川浩「植物図鑑」の感想です。

有川浩「植物図鑑」☆☆☆

植物図鑑

会社の飲み会から酔って帰宅したさやかが、アパートの前で大きなゴミ袋と勘違いして見つけたのは、何と行き倒れになった若い男性イツキ。

「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?咬みません。躾のできたよい子です」なんて事を言い出したイツキを、さやかは酔った勢いで部屋にあげて一泊させる事に。

酔いが冷めて正気にかえれば何てことを・・・と思うはずが、しかし翌朝彼が冷蔵庫の余り物で作った料理の美味しかったこと。

普段はコンビニ弁当などで済ませ碌なモノを食べていないさやかは、お金が全くないというイツキに主夫として同居しないか申し入れ、イツキも快く引き受ける。

実際に同居してみるとイツキは実に良く出来た奴で、少ないお金を工夫して使い、だけでなく自分自身もコンビニの夜のバイトを始めだす。

しかも植物に関する豊富な知識を駆使して身の回りにある野草を使って料理を作り、さやかはイツキとの休日の野草探しの散策が楽しみになっていく。

でもさやかがイツキの事が気になって仕方ないのに、イツキはさやかに手を出すそぶりも見せない。あいつは私に興味がないのかしら?


のどかで大甘なラブ・ロマンスです。しかもなかなかどうして品が良い恋愛小説です。

連作短編のような形をとって、休日ごとに近所を歩いたり、サイクリングしたりして、食べられる野草を見つけてはイツキとさやかが料理するレシピが登場します。

風変わりな構成ですけど、面白い趣向の作品ですね。

何でも知っていて見た目も悪くなくて穏やかな性格のイツキと、そんな彼についつい甘えてしまう可愛らしいさやかのホンワカした恋愛が微笑ましい。

さやかに何も言わずに、突然イツキが姿をくらませてしまいますが、最後はメデタシメデタシとなる展開には安心感があって管理人は好きです。