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F・ポール・ウィルスン「触手(タッチ)」の感想です。

F・ポール・ウィルスン「触手(タッチ)」☆☆☆

触手(タッチ)

出来る限り多くの患者を救いたいという理想を抱いている医師アラン・バルマー。

ある日、精神を病んだホームレスの男がアランを見て「あんただ」と突然叫んだ。

何が何だか分からないままその場を立ち去ったアランだったが、数日たったある日、そのホームレスを診察することになる。

彼の手に振れた瞬間、アランの身体の中に不思議な感覚が満ちていき、アランは人に触れるだけで病を癒す奇跡の力を手に入れてしまう。

それは「ダ・タイ・バオ」という古来よりベトナムに伝わるどんな難病も治癒してしまう不思議な力。

アランがその力を手にした事を知ったベトナム移民たちを始め、不治の病を持った患者たちがアランの元を訪れ始める。

予てから病人やけが人を救いたいと思っていたアランだったが、実はダ・タイ・バオは呪われた力だった。

アランが触れることにより病は治るが、その度にアランの中で何かが失われていく。しかもアランにはこの力を制御することが出来ない。

徐々に壊れていくアランの運命は果たして・・・。


高い理想を持ち患者を思いやる気持ちが強い誠実な医師アランと、アランに惹かれている自閉症の息子を持つ彫刻家シルビア、シルビアに仕えるベトナム男性バー、アランの力を独り占めしようと画策するマクレディ上院議員、アランのライバル医師などが登場して、ユニークな医療ホラーが展開されて行きます。

管理人もどんな難病でも治す力があったら面白いだろうなァ・・・と妄想を抱くことがありますけど、この主人公の場合は代償があまりに大きい。

それでなくても、そんなスゴイ力が本当にあったら大変でしょうね。

世界中の病人やけが人を治せるわけがないし、そんな事はすべきでもないけど、患者の立場からすれば病を治して欲しいでしょうし、ヒューマニズムなどを超えて大混乱になってしまいます。

過ぎたるは及ばざるが如しですね。

まぁ、そんな事を考える間もなくアップテンポで展開する、スリリングなホラー・ファンタジィの傑作で、なかなか考えさせるテーマの感動作です。