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フランク・ハーバート「デューン 砂の惑星」の感想です。

フランク・ハーバート「デューン 砂の惑星」☆☆☆

デューン 砂の惑星

遠い未来、コリノ皇家の下で生息可能な惑星を貴族たちが支配する世界は、コリノ家、貴族たち、超能力を持つ女性たちの修道会ベネ・ゲセリット、ミュータントと化した宇宙協会の航宙士などが覇権を争う混沌とした社会だった。

この世界で最重要となっている香料メランジは、抗老化作用を持つとともに宇宙空間で超光速輸送を行う航宙士やベネ・ゲセリットの能力を発揮するのに必須となる麻薬で、砂の惑星アラキスに住む砂虫だけがそれを提供していた。

皇帝の命により惑星アラキスの統治権を宿敵ハルコンネン男爵家から譲り受けたアトレイデス公爵家の当主レトは、これを皇帝とハルコンネンが仕掛けた罠ではないかと疑っているが、アトレイデス家の後継者で男性でありながらベネ・ゲセリットと同様の超能力を持つ息子ポールの為にアラキスに赴く。

しかしハルコンネンの奸計によりレトは命を奪われ、アトレイデス家の家臣団は四散し、アラキスは帝国の直轄領となってしまうが、ポールとその母ジェシカはアラキスの原住民フレーメンに救われてハルコンネン家と帝国に反旗を翻す。


流石にヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞した傑作SFなだけに面白いSF大作でしたが、少々難解な部分も多い作品でした。

管理人が読んだのは訳者が矢野徹氏の版ですが、訳者あとがきによれば目出度く終わった冒険活劇「砂の惑星」の続編があり、「砂の惑星」で提示された哲学的問題が続編で更に発展していくとの事です。

確かに「デューン砂漠の救世主」、「デューン砂丘の子供たち」、「デューン砂漠の神皇帝」、「デューン砂漠の異端者」、「デューン砂丘の大聖堂」と5作の続編がありますが、管理人は「デューン砂漠の救世主」は読みましたが一段と難解になっていて、矢野徹氏とは違ってエンターティメントに徹した作品の方が好きですのでシリーズ全作は読んでいません。

この作品が発表された年が1965年ですので、矢野氏はベトナム戦争になぞらえて、皇帝とその近衛兵団サルダウカーとハルコンネンをベトナム政府軍・アメリカ軍、フレーメンを解放戦線と位置付けていますけど、おそらく作者のハーバートはそんなに単純な図式で捉えていないように思います。

砂漠の民ベドウィンを連想させるフレーメンが過酷な環境下で生き抜いて強靭となり、彼らの中で生きていくポールがメランジの影響を受けて覚醒していく姿、そしてポールに自分たちの救世主を見るフレーメンたち、絶対権力者でもない皇帝を中心に蠢く勢力争いなどが重層的に重なって興味深い作品になっています。

奥の深い作品ですが、単純な冒険SFとしても楽しめる作品だと思います。