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フレデリック・フォーサイス「ネゴシェイター」の感想です。

フレデリック・フォーサイス「ネゴシェイター」☆☆☆

ネゴシェイター

石油資源の涸渇、軍縮による軍需産業の衰退、イスラム世界に勃発する原理主義。これら1990年代当時のホットな話題(何とソ連は崩壊したのに現在に至るまで同じような事態が続いている)を巧みに組み合わせて、一大陰謀事件を作り上げていくフォーサイスの手腕が本当に素晴らしい。

CIA・FBIを始めとする各国諜報機関や警察の無能さを際立たせているような元グリーンベレーの交渉人の活躍は、あまりに凄すぎて納得できない気もしますが、綿密に計算されたプロットと迫力で、事件に隠された謎を追いかけていく孤独な一匹狼の交渉人の物語に引きずり込まれていきます。

交渉人クインの人物造形も、心に過去の傷を負う心優しきタフガイというハードボイルドの典型の様な主人公で共感を覚えます。

東西冷戦の末期の社会情勢を背景にしていますが、今読んでも古さを感じません。

読み出したら止められない、本当に面白い超一流の冒険小説だと思います。