ディーン・R.クーンツ「ウィスパーズ」☆☆☆
幼い頃に両親から受けたDVの影響で、人付き合いが苦手なハリウッドの新進女性脚本家ヒラリー・トーマスは、自宅に侵入してきたナイフを持った男に襲われる。
おぞましい言葉を吐き、狂気にかられた中年男は、かつて取材で一度だけ会ったことがある地方のワイナリー経営者ブルーノ・フライだった。
何とか彼を撃退したヒラリーは急いで警察に通報するが、駆けつけた刑事二人のうちの一人はヒラリーの狂言ではないかと疑う。
ヒラリーが犯人はブルーノ・フライだと告げ、刑事がフライの住む地元警察に確認をとったところ、ブルーノ・フライは自宅にいると言うのだ。
私を襲った犯人は間違いなくブルーノ・フライだった。
しかし警察は耳を貸さず、ヒラリーは護身用の銃までも取り上げられてしまう。
そして数日が過ぎたある夜、再びヒラリーをフライが襲う。
絶体絶命の窮地に陥ったヒラリーだったが、逆にフライをナイフで刺して撃退する。
再び警察に通報するヒラリーの元に駆けつけた刑事は以前と同じ二人組だったが、今度は犯人が侵入した形跡があり、そしてヒラリーの自宅近くで刺殺されたブルーノ・フライの死体が発見され事件は終息したかに思えた。
駆けつけた二人の刑事のうち、最初からヒラリーに同情的だったロス市警警部補クレメンザは、事件が終わった後でヒラリーを食事に誘う。
人付き合いの苦手なヒラリーははじめは断るのだが、クレメンザのユーモア溢れる誘い言葉は巧みで断り切れない。
クレメンザと二人でクレメンザの元相棒が経営するイタリアン・レストランに出かけたヒラリーは、美味しい食事を楽しむと同時に、レストランの壁に描かれた素晴らしい絵画に驚嘆する。
そしてその絵を描いたのがクレメンザである事を知ると、本格的に絵画の道に進むべきだと彼に説く。
そうしてクレメンザとヒラリーはいつしか激しい恋に陥るが、そんなある夜、ヒラリーの前に確かに死んだはずのブルーノ・フライが凶器を持って現れる・・・。
流石にクーンツ、面白いですねぇ。
ホラー風味のラブ・サスペンスが息もつかさずに展開されて、読むのを止められない感じです。
愛することに臆病なヒラリー、新しい世界に踏み出すことを躊躇するクレメンザ、そんな二人がお互いに手を取りながら道を切り開いていくのが良いです。
クーンツ作品らしく、少々同情したくなる人物もいますけれどもね。