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ロイス・マクマスター・ビジョルド 「死者の短剣」の感想です。

ロイス・マクマスター・ビジョルド「死者の短剣」☆☆☆

死者の短剣

地の民と湖の民という2つの種族が暮らす世界で、種族の違う男と女が周囲の偏見を乗り越えて夫婦となり、世界を荒廃に導こうとする悪鬼に立ち向かうというような内容の異世界ファンタジィです。

不思議な能力を持ち、長命で、突然出現する悪鬼を退治することが一番の使命となっている湖の民は、普通のファンタジィであればエルフ族のような存在ですけど、エルフ族と聞いて感じるような線の細さはありません。

一方で地の民はいわゆる普通の人間で、いたる所に住み着いて、彼らには理解できない能力を持つ湖の民を胡散臭い目で見つめ、少し恐れてもいる。

そんな交わることのない2つの種族だが、湖の民の警邏隊員ダグと地の民の娘フォーンは悪鬼退治で一緒に戦ったことから惹かれ合い、周囲の反対を押し切り夫婦となります。

しかし湖の民も地の民も一部の人間を除いて、この結婚には否定的でいる。

物語はそうした種族間の融和を図る二人の姿を、人間を襲い、操り、食いつくす悪鬼との戦いを交えて描いていきます。

異なる文化の出会い、お互いを理解していないことからくる誤解と偏見、そうしたものを取り除こうと孤軍奮闘する経験豊富な戦士ダグと、彼を支え常に前向きな考え方をする明るい娘フォーンの冒険の旅が、どこか土臭い世界観とともに興味深い。

「惑わし」「遺産」「旅路」「地平線」の四部作ですが、世界を変えていく二人の姿が心地よいファンタジィです。