今野敏「果断 - 隠蔽捜査2」☆☆☆

果断 - 隠蔽捜査2

諸般の事情により警察庁長官官房総務課長という出世コースから警視庁の大森警察署長に左遷させられたキャリア警察官僚竜崎伸也は、署長として日々膨大な書類仕事をこなし、地域に密着した広報活動などに振り回されている。

そんな中、消費者金融会社を襲った強盗事件が発生した。

大森署館内を経過して逃走した犯人たちは、本庁の機動捜査隊に逮捕されるが、別行動をとって逮捕を免れた犯人が一人、大森署管内の小料理屋に拳銃を持って立てこもり、主人夫婦を人質に取るという事件が起る。

現場で陣頭指揮を執った竜崎だが、警視庁のSITとSATまでが出動した事件は意外な方向に進む。


堅物のキャリア警察官僚を主人公にした隠蔽捜査シリーズの2作目になります。

一般的には降格人事をくらったキャリアは官僚を辞めるらしいですが、警察官が天職と信じ、お国のために働くのが自分に課せられた使命だと思っている竜崎は、警視長という階級より2ランク下の階級が通常任される所轄署長を任命されても、自分のベストを尽くすだけと、降格人事を甘んじて受けています。

人質を取った立てこもり事件も警察小説らしい緊迫感がありますが、この小説が面白いのは降格人事を喰らった竜崎に対する他の警察官たちの態度です。

特に管内を通って逃走した強盗犯が機動捜査隊に逮捕された事で、メンツを潰されたと怒鳴りこんでくる方面本部の管理官・野間崎が、自分よりも下の立場のはずの警察署長が2階級も上と知って態度を変えるところなど、どこか水戸黄門風で笑えます。

管理官に面と向かって反対意見を言う竜崎に、大森署の幹部たちがハラハラする場面もおかしい。

そんな変人の竜崎ですが、妻の突然の入院など家庭でも問題を抱えていて、こういう家庭環境や警察内での仕事のやり方や処世などが、どこか身近な感じでサラリーマン小説っぽくて、単純な警察小説よりも深みのある作品になっています。

山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞していますが、確かに隠蔽捜査シリーズの中でも一番読み応えのある作品だと思います。

管理人も何度も読み返してしまいました。

「隠蔽捜査」シリーズ。

  1. 隠蔽捜査
  2. 「果断 - 隠蔽捜査2」(本書)
  3. 「疑心 - 隠蔽捜査3」
  4. 「初陣 - 隠蔽捜査3.5」
  5. 「転迷 - 隠蔽捜査4」
  6. 「宰領 - 隠蔽捜査5」
  7. 「自覚 - 隠蔽捜査5.5」
  8. 「去就 - 隠蔽捜査6」
  9. 「棲月 - 隠蔽捜査7」


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