面白い本を探す

アマンダ・クイック「時のかけらを紡いで」の感想です。

アマンダ・クイック「時のかけらを紡いで」☆☆☆

時のかけらを紡いで

「冷血なコルチェスター」という不名誉な呼び名で知られるコルチェスター伯爵マサイアス・マーシャルは、共同研究者ラトリッジと共に失われた古代王国ザマーの発掘を行い、今はザマー学の最高の権威として知られている。

古代埋葬品収集家の叔父セルウィンから遺産を相続した名家の令嬢イモージェン・ウォーターストーンが、セルウィンに恩があるというマサイアスを館に招いたのは、ザマーの権威であるマサイアスに協力して欲しいことがあるからだった。

イモージェンの話では、3年前に自殺したとされる親友ルーシーの死は、実はルーシーの夫であるヴァネック卿によるものだと分かっているが証拠がない。そこでザマーの財宝発掘という架空の話を餌にしてヴァネック卿に資金を出させ、破滅に追い込む計画を立てたが、そのためにはザマーの権威であるマサイアスの協力が必要だという事だった。

そんなバカげた計画が上手くいくはずはないと話すマサイアスだったが、なぜかイモージェンが気になるマサイアスは、彼女の計画に巻き込まれていく・・・。


アマンダ・クイック作品らしい、善良だけど短気で世間知らずで自己主張の強い変わり者の女性と、周囲の人間には冷血な人物と恐れられているけど、本当は洞察力に優れた思いやりのある男性のロマンスをサスペンスで味付けしたヒストリカル・ロマンスです。

不仲な両親を見て育ったため、世の中を斜めに見ている孤独な男マサイアスが、亡くなった両親から自立心を持つように育てられ、世間の評判を全く気にかけない事から「慎みのないイモージェン」などと呼ばれて婚期を逃したイモージェンにより、本来の人間性を戻していくような物語が、独特のユーモアで描かれています。