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アマンダ・クイック「夢見る赤毛の妖精」の感想です。

アマンダ・クイック「夢見る赤毛の妖精」☆☆☆

夢見る赤毛の妖精

ブレード伯爵サイモン・オーガスタス・トラハーンは、自分と母親を悲嘆の底に落とした23年前の事件に関わった4人の男たちに復讐を誓っていた。

愚かな父親が博打で全財産を失い、挙句の果てに自宅で自分の頭を撃ち抜いて自殺し、更に父親の投資仲間はサイモンの請願を退けて、父親の投資分を自分たちで山分けした。

まだ12歳だったサイモンは、母親の死を見届けるとイギリスを離れ、東インドで大成功を収めた後に帰国し、4人への復讐を始めた。

4人の中では、賭け事に目がなかった父親から全財産を奪い自殺に追い込んだブロデリック・ファリンドンが特に罪が深く、ファリンドン一族を破滅に追い込むための計画をサイモンは慎重に練っていた。

ブロデリックと彼の双子の息子は経済観念のない遊び人で稼ぐ術を知らないが、末娘エミリーは資産運用の才能に富み、ファリンドン一族の生活を支えている。

エミリーがファリンドンの生計に関わらなくなれば彼らは自滅する。

サイモンは詩の創作を趣味とするエミリーと文通を始め、ある日エミリーに会うために、彼が昔住んでいた田舎町リトル・ディッピントンを訪れるが・・・。


復讐に燃える非情な男サイモンと人の良い天然の娘エミリーとのロマンスを描いた作品です。

サイモンはエミリーを誘惑し、自分の妻にすることでファリンドン一族から引き離し、じわじわとブロデリック・ファリンドンとその息子を破滅に追い込もうと画策しています。

一方で、エミリーには5年前に起こした駆け落ち騒動によるスキャンダルで、良家との結婚は望めないという事情があります。

サイモンがエミリーに求婚した事実を知ったブロデリックは、サイモンの目論見をエミリーに話して結婚を止めさせようとしますが、サイモンが自分を愛しているから求婚した訳ではないと知っても尚、エミリーはサイモンとの強い絆を信じて夫婦となることを決め、サイモンは自分がこの変わり者の娘に惹かれていることを自覚していきます。

ヒーローはアマンダ・クイック作品らしい孤独を抱えた、他人に畏怖を与える男性ですが、ヒロインは時々「こんちくしょう」と口走ってしまったりする無邪気な女性で、ヒーローが立派な人物であることを心の底から信じています。

復讐を絡めた物語ですけど、非常にあっけらかんとしていて、サスペンスの要素などなく、サイモンとエミリーが絆を深めていくユーモラスなヒストリカル・ロマンスです。

こういう小説は平和で良いですね。