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アマンダ・クイック「香り舞う島に呼ばれて」の感想です。

アマンダ・クイック「香り舞う島に呼ばれて」☆☆☆

香り舞う島に呼ばれて

父と兄が相次いで旅先で客死したため、豊かな領地デザイア島の相続人となったクレア。

もともと領地の管理に興味がなかった父や兄に代わって、島に咲き乱れる薔薇を活かした特産品を生み出し島を豊かにしたのはクレアで、実質的にはデザイア島の領主のようなものだったが、彼女の後見人のサーストン男爵は領地を守るには夫が必要だとクレアを説得して、自分の非嫡出子の息子ガレスを花婿候補として推薦する。

頭の良いしっかり者のクレアは、自由気ままで誰にも縛られない今の生活に満足していたのだが、サーストン男爵の申し入れを断ることも出来ず、数人の花婿候補の中から自分の意に合う男性を花婿とすることを条件に、ガレスを候補の一人として島に迎い入れることを了承する。

一方、勇猛果敢で冷酷な騎士として名が知られているガレスは、有力な貴族などから危険な仕事を高額な報酬で請け負う仕事をしていて裕福だったが、庶子のため領地を持っていない事から、豊かな領地を相続したクレアを妻に迎えて領主になろうと、意気揚々とデザイア島に向かった。


出来れば結婚などしたくないクレアは、結婚するなら自分の言いなりになるような男性を夫にしようかと思っています。

ガレスを知った初めのうちは、威圧感のあるガレスから何とか逃れようと企むけど、勇猛なだけでなく冷静で意思の強いガレスに徐々に心惹かれてしまい、穏やかな夫と暮らしたい気持ちとガレスへの愛の狭間で気持ちが揺らいでいきます。

何かあると直ぐに頭に血が上る短気な性格ながら、人が良くて思いやりのあるクレアが、常に冷静沈着で感情や愛情表現を表に出さないガレスにいらつきながら、結局は結ばれていくという話に、島を巡る陰謀を交えて物語が進行する、いつものアマンダ・クイックのロマンス小説です。

クレアやガレスの考え方が中世のイギリスにしては現代的過ぎますけど、ヒストリカル・ロマンスは歴史小説というよりも、架空の世界を舞台にした一種のファンタジィですから、この作品に限らず登場人物たちの価値観が現代的なのは仕方がないでしょうね。