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篠田節子「ゴサインタン―神の座」の感想です。

篠田節子「ゴサインタン―神の座」☆☆☆

ゴサインタン―神の座

40歳間近となった農家の跡取り息子の独身男性・結木輝和は、由緒ある大地主の家に生まれ地域の尊敬を集めているが、細々と農業を営む輝和の元には嫁のきてもなく、老いを迎えつつある両親を抱えて張りの無い生活が続く。

そんな時に誘われた外国人との集団見合で、輝和はやや愚鈍な一人のネパール人女性を妻に迎える事を決める。

しかし彼女が嫁に来てからというもの、地味ではあっても安定していた彼の周囲には様々な波乱が巻き起こり、輝和はいつしか全てのものを失っていく。


小説の中の事なのに、読んでいて腹が立ってきたり、奇跡が起きた事にホロっとしたりして、物語の中に引き込まれてしまう実に興味深い作品です。

読んでいて宗教的な意味合いを含んだ啓蒙小説の様な作品なのかとも思いましたが、全体的には宗教的な印象とは少し違った感じです。

何やら不思議な小説を読んだ気分です。

波乱万丈の物語で、人間が生きていくのに必要なものについて考えさせられ、そしてネパール、ゴサインタンの麓でのラストシーンに清々しい感動を受けます。

これはなかなかの傑作だと思います。