ロバート・チャールズ・ウィルスン「時間封鎖」☆☆

時間封鎖

ある夜、突然星々と月が空から消え、翌朝に現れた太陽も贋物だという現象が起きる。

何と地球の周りを正体不明の一種の膜のようなものが覆っているらしい。

しかもこの膜の影響で地球と宇宙の時間の流れに大きな変化があり、地球の時間が1億分の1の速度に変わってしまう。

すなわち地球で1年経つ時、宇宙では何億もの時が経過していて、本物の太陽は衰退していき、このままでは地球の未来は尽きてしまう。

この現象が起こった時には少年だった「僕」タイラー・ディプリーと、その親友で天才的な科学者となるジェイスン・ロートン、そしてジェイスンの姉ダイアンは、滅び行く時代の中でそれぞれの道を歩みだす。


ロバート・チャールズ・ウィルスンらしい突然時間の流れが遅くなってしまった地球の姿を描いた本格的なハードSFです。

不可解な現象に襲われ、時間を奪われ、宇宙で孤立する地球を舞台にして、主人公のタイラーの現在と回顧する過去を相互に描いた作品です。

スケールの大きな発想と一種のパニック小説のような描写、それに年代記っぽい雰囲気が感じられる面白い作品です。

こういう異常事態が発生した時に、あくまでも科学的なアプローチを試みるジェイスンと宗教に逃げ込むダイアン、均衡のとれたスタンスで生きようと試みるタイラーなど、人間の多様な生き方を描いています。

破滅に向かってまっしぐらとなる地球、その状況を創りだしたのは誰なのか、人類はこの危機を乗り越えられるのか、などなど謎と興味はつきませんが、いかにも続編に続くような展開で終わってしまいます。

2006年のヒューゴー賞を受賞した傑作SFですが、管理人は近頃こういう小説を読むのがしんどくなってきました。もっと柔軟でいたいと切に願う今日此の頃です。

 

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