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ロバート・R・マキャモン「少年時代」の感想です。

ロバート・R・マキャモン「少年時代」☆☆☆

少年時代

1960年代のアメリカ南部の小さな田舎町を舞台にして、多感な時期の少年の成長を描いた、古き良き時代の郷愁を強く感じさせるノスタルジックな雰囲気の作品です。

物語は12歳の少年コーリーが、人口わずか1500人の小さな町で起こった不可解な殺人事件を父親とともに目撃したことから始まります。

今まで凶悪な事件など起きたことがない平和な町で、住民はみんな知り合いで殺人者などいるはずもない。

殺人事件を目撃したのはコーリーと父親の二人だけで、湖に沈んだはずの死体は上がらず、町に行方不明者もいない。

コーリーの家庭はけっして豊かではないけど、健全な考えを持つ立派な父親と優しい母親がいる明るい家庭だったが、この殺人事件を目撃してから尊敬する父親の様子が少しづつおかしくなっていく。

ただ多感な12歳の少年コーリーは、事件や家族のことを気にしながらも、3人の親友とともに、毎日新しい発見がある世界で冒険する日々を楽しむことで忙しい。


1992年の世界幻想文学大賞と、1995年の第14回日本冒険小説協会大賞を受賞した情感あふれるファンタジィ・ホラーの名作です。

この小説で描かれる情景は、誰もが知り合いの小さな町での様々な出来事。

いじめっ子といじめられッ子。

近くにある神秘に満ちた大自然と謎の生き物。

映画館で見た恐怖映画の影に怯える夜。

町に来るカーニヴァルの興奮。

新しい自転車を手に入れた感動。

町外れにある黒人のスラム街と人種偏見に満ちた人々、人種偏見にとらわれない人々。

風変りな変人。身近に有る死と別れ・・・。そして、少年の成長。

この全てが愛おしく感動を呼びます。

しかもこの作品は、悲しみや郷愁に囚われるばかりでなく、いつの時代でも少年たちがそうしているように未来を前向きに見ています。

言葉では言い表せない魔法に満ちた素晴らしい作品で、管理人は本当に大好きです。