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マリオ・プーヅォ「ゴッドファーザー」の感想です。

マリオ・プーヅォ「ゴッドファーザー」☆☆☆

ゴッドファーザー

「キネマ旬報」が発表した映画史上のベストテンの外国映画部門で第一位に選ばれているフランシス・F・コッポラ監督の名作映画の原作となる小説です。

映画は世界的に名作として高い評価を受けていますが、原作小説の方は映画公開時にはそれなりに評判になっていましたが、今現在高い評価を受けているという印象がありません。

しかし管理人は映画を観る前に原作を読んだ事もあって、この小説の面白さを忘れられません。

小説は映画のPartⅠ全編とPartⅡのヴィトー・コルレオーネが若かりし頃の回想シーンだと思っていればほぼ間違い有りません。

コッポラは原作のエッセンスを巧みにくみ上げて映画化しているし、更に映画の脚本を書いたのが原作者のマリオ・プーヅォですから、物語の筋書き自体は映画と小説は殆ど同じですけど、ただ原作の方が分かりやすい(但し映画の方がドラマチック)ように思います。

管理人の知る限り、この小説が書かれて映画化されて大ヒットするまでは、マフィアという言葉は日本ではあまり一般的ではなかった様な気がします。アメリカの犯罪組織といえばアル・カポネに代表されるギャングのイメージでした。

ところがこの作品では、そのアル・カポネが3流ギャングのように描かれ、ニューヨーク5大ファミリーのシシリア人のしきたりを守るマフィアこそがアメリカの裏社会を牛耳っているという風に書かれていて新鮮な印象でした。

冷酷なマフィアの社会を舞台にしていますけど、この作品で描かれているのは家族により良い暮らしをおくらせる為に犯罪や暴力をファミリー・ビジネスにせざるを得なかった男たちで、だからこそ厳しい掟に縛られていて、一時たりとも気を抜く事が許されない世界が展開します。

マフィアを美化し過ぎているかもしれないけど、暴力もビジネスの一つの形態と割り切り、人と人との繋がりを大事にして行かなければ、移民社会アメリカでのし上がって行くのが難しかった現実を冷静に描いていると思います。

当初は家業を嫌っていたコルレオーネ家の3男マイケルが、ドンである父親ヴィトーの暗殺未遂事件をきっかけにファミリー・ビジネスに関わり始めて、弱肉強食の世界の中で冷静で冷酷な人間に変貌して行くまでを描いた作品ですけど、同じように冷酷な男でありながらも人間的な温かみを感じさせる父親を対比させることで時代の流れを感じさせ、単なるエンターティメントで終わっていないところが素晴らしい作品です。