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伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」の感想です。

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」☆☆

ゴールデンスランバー

若くして首相に選ばれた金田貞義の出身地仙台では、金田首相凱旋パレードが行われていた。

TVカメラに映るパレードの様子。そこに謎の物体が突然現れたかと思うと大爆発が起こり、金田首相は暗殺された。

丁度それと時を同じくして、元宅配便のドライバー青柳雅春は旧友の森田森吾と久しぶりに会っていた。

冗談好きで快活だった森田の様子はどこか不自然に感じられたが、青柳は森田と話しているうちに突然の眠気に襲われてクルマの中で寝込んでしまった。

声をかけられて目を覚ました青柳に向かって、森田は真剣な表情で「お前に睡眠薬を飲ませた」「お前ははめられている」「おそらく金田首相は暗殺される」「お前はオズワルドにされる」「「何があっても逃げろ」と訳の分からない事を口走る。

そして突然聞こえて来た爆発音と、何故か拳銃を構えて青柳のいるクルマに向かってくる警官。

ここから青柳雅春の逃走劇が始まった。


2008年本屋大賞と第21回山本周五郎賞受賞作品で、2009年の「このミステリィがすごい!」で国内部門1位に輝いたミステリィ小説です。

全体的に有り得ない話ですからリアリティは感じませんが、青柳を追跡してくるメチャクチャな警察や仙台の町を騒がせているナイフ魔などが入り乱れて、日本とは思えないような暴走劇が繰り広げられます。

青柳を嵌めた人物、青柳を追う者、青柳に救いの手を差し伸べる人々。時折青柳とその仲間たちの青春時代の思い出に戻って語られる物語は読みごたえが有ります。

登場人物もなかなか多彩で、どこまでも人の良い主人公青柳を始め風変わりな人物が多いですけど、そんな中で青柳の無実を信じ切っている青柳の両親の姿が良いですね。

複線がたくみに貼られていて、ああナルホドねと思わせる仕掛けもなかなか楽しかったです。

これで設定にリアリティがあるとホントに怖い話になるんだと思いますけど、あえてそうしなかった所が値打ちですね。