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東野圭吾「容疑者Xの献身」の感想です。

東野圭吾「容疑者Xの献身」☆☆☆

容疑者Xの献身

小さなアパートで中学生の娘・美里と2人で暮らしている花岡靖子のところに、別れた夫・富樫が金をせびりにやって来た。

もうとっくに縁を切ったはずなのに、靖子の前に現れてナケナシの金を持って行こうとするろくでなし。

この男に居場所を知られたからには、小金を渡すのも仕方がないと諦めかけた靖子だったが、富樫が彼を嫌っている美里に暴行している姿を見て逆上し、こたつのコードで彼の首を絞めて殺害してしまう。

自分を取り戻し、自首しようとする靖子だったが、しかしこのままでは娘も共犯者として捕まってしまうかも知れない。

呆然としている靖子のところに、アパートの隣人の高校教師・石神から電話がかかってきた。

以前から石神は、靖子と美里の母娘に密かに好意を寄せていた。

その母娘が住んでいる部屋で何か良からぬことが起きた事を感じた石神は、靖子の部屋に行き、富樫が殺害された現場を一目見て考え込み、「自分に全てを任せて欲しい」と死体の始末からその後の対応まで、全てを計画立てて靖子たちには何も知らせずに実行していく。

外見は全く冴えない中年の高校教師の石神だが、数学者として稀有な才能を持つ論理的な人物で、彼の企てた完全犯罪は緻密に立てられている。

しかし事件を担当した警視庁の刑事・草薙俊平と、その友人で天才ガリレオとあだ名される物理学者・湯川学は石神と大学の同窓生だった。

草薙から石神のことを聞いて20年ぶりに石神に再会した湯川は、石神が何かを隠していることに気づき、石神が作り上げたトリックに挑むことになる。


探偵ガリレオ・シリーズの第3作目の傑作ミステリーで、第134回直木賞受賞作にして、2005年の「このミステリーがすごい」の国内部門1位の作品です。

こういうシリーズ物の小説は、最初の作品が一番面白かったりすることがありますけど、この作品は何しろ直木賞の受賞作です。

直木賞を取るような作品だから、ひょっとしたら感動的な作品になっているかも知れないけど、ミステリィとしての完成度やトリックは大した事なかろうと思っていましたが、こんな風に来るとは思いもしなかった。

家庭の事情で数学者への道を諦めた石神の深い孤独、石神が完全犯罪に挑む理由、石神が計画したトリック、石神が花岡親子に対して持つ純粋な気持ち、石神と湯川の複雑な友情。どれが欠けてもここまでの作品にはならなかったでしょう。

読み終えて深く感動して、何やら複雑な気持ちになってしまいます。スゴイ作品でした。