ジョン・ハート「ラスト・チャイルド」☆☆☆

ラスト・チャイルド

1年前に起きた少女誘拐事件により壊れた家庭と、その事件に引きずられ苦悩する刑事を中心とする人間模様を描いた英国推理作家協会賞と2010年度のエドガー賞を受賞したミステリィです。


13歳の少年ジョニー・メリモンは誘拐された双子の妹アリッサの行方を探して町中を調べていた。

妹は何者かに車に連れ込まれて誘拐された。それを目撃したのはジョニーの唯一人の親友ジャック。捜査を担当する主任刑事のハントはジョニーに必ずアリッサを救うと約束するが、警察の捜査は一向に進まない。

そうした中で、ジョニーが尊敬していた父親は妻からの叱責に耐え切れなかったのか失踪してしまう。

愛する娘が誘拐された上に夫に見捨てられた母親は打ちひしがれ、夫の雇い主だったろくでなしの男の愛人同様の生活を余儀なくされ、いつしか薬物漬けにされてしまう。ジョニーが神に祈りを捧げても何も起きない。

大人は信用出来ない、事件は自分で解決するしか無いと思い込んだジョニーは、親友の力を借りながら独力でアリッサを探そうとするが、そうこうする内にジョニーの学校の女生徒がまた誘拐される事件が発生する。


13歳の少年が誘拐事件の捜査をするなんて、ムリがある話ではないかと思いつつ読みましたが、出だしから引き込まれてしまいました。

事件が事件だけに暗い話ですけど、救いようのない状況に置かれながらも必死になって妹を探すジョニーの姿には感動を覚えます。

またアリッサ誘拐事件に深く入り込みすぎた結果、妻が家を出てしまい、同居する息子との仲もおかしくなってしまった刑事ハントの複雑な気持ちも巧みに描かれています。

ハントは理想的な家族だったメリモン家の人たちに共感を持ち、ジョニーの美しい母親に自分ではどうすることも出来ず惹かれています。

それが警察署内でスキャンダラスに語られたりしてハントの立場も微妙なのですが、そういった辺りにどこかリアリティを感じる人間模様が描かれています。

夢中になって読んでしまった作品です。

 

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