チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」☆☆

都市と都市

ベジェルとウル・コーマというヨーロッパの端に位置する2つの都市国家は、地図上ではほぼ同じ位置を占め、お互いに隣接しているけど目に見える国境のような目印が存在しないという、世界に類を見ない関係にあった。

国境は複雑に入り組み、ベジェルの住宅街のすぐ横の通りがウル・コーマの繁華街だったりするが、それでも二つの国は厳然と分かれていて、2国の住民は無意識の中でお互いを意識しないように教育されている。

見てはいけない場所で意識的に見たり、国境線を超えたりすることは厳しく禁止され、禁を犯したものには、ブリーチという謎の組織が処罰しに来るという。

ある時、ベジェルの町外れのスケートボード場で一人の女性の死体が発見された。

その捜査にあたったベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、捜査を進めるうちに殺人そのものはウル・コーマで行われ、死体がベジェルに捨てられた事を突き止める。

これはブリーチ行為だ。そう判断したボルルだったが、何故か監視委員会でブリーチではないとの結論が下され、ボルルは捜査のために近くて遠い異国ウル・コーマに向かうことになる。


最初の数頁を読んだ感じでは良く分からない固有名詞や人名が多くて、ちょっと意味がわからないし、SFやファンタジィっぽくないし、う~んと思いましたが、読み進むうちに作者の世界に入り込んでしまう。そんな作品です。

自分の住んでいる場所のすぐ脇に別の住民がいたりしたら、絶対に知らぬふりなど出来ないと思いますけど、この小説の舞台ではそれを行うことが当然とされています。

こんな奇怪な設定の小説など読んだことがない。

さらに言えば、この作品は純然なるミステリィです。

読んでいるうちに謎解きになっていく訳ですが、殺人事件の謎とベジェルとウル・コーマの謎が交差して、極めて興味深い話になっていきます。

SFっぽい小道具も出て来ないし、不思議な幻想的な物語というのとも違う、架空ではあるけど都市国家で起る殺人事件の物語。

ミステリィでエンターティメント性もありますけど、とても思索性に富んだ奇妙な風合いの作品です。

心に残りましたが、ただ読み返すかというとどうなんだろう。


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