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A・E・ヴァン・ヴォークト「スラン」の感想です。

A・E・ヴァン・ヴォークト「スラン」☆☆☆

スラン

テレパシー能力を持ち、知性、身体能力共に人類以上の新人類スランは、その優れた能力と人類をスラン化しているという根も葉もない噂から恐れられ、その後地球を襲った災厄の元凶として狂気のスラン狩りが公に行われ、今や絶滅の危機に瀕していた。

人類の冷徹な指導者キア・グレイは、スランを狩り出し殺害し滅ぼす事に心血を注ぎ、キア・グレイがスラン研究のためとの口実の元に庇護するスランの少女キャスリーン・レイトンは、グレイの為にテレパシー能力を使って彼の政敵排除に使われている。

そんな彼女に向ける周囲の人間の憎悪は厳しく、その憎悪を感知できるキャスリーンは一人孤独な日々をおくっていた。

一方で天才科学者の父親をスラン狩りで殺害され、母と一緒に逃亡生活を送っていたスランの少年ジョミー・クロスは、スランを追う警察に発見されて母が死に、一人逃れて貧民窟に身を潜めるが、ジョミーを利用する強欲な老婆に囚われ、彼女のために働くことを余儀なくされてしまう。

仲間に会えず孤独な日々を送りながら成長するジョミーとキャスリーンだったが、ある日二人が出会った時・・・。


ミュータント・テーマSF小説の古典中の古典です。

1946年発表の作品ですけど、ヴォークトの作品らしく今読んでも不思議と古さを感じさせません。

彼の作品は複雑なプロットで込み入った展開をする作品が多いと思いますが、この作品はシンプルでスピーディな展開で、すぐに読み終えてしまいます。

某科学者が生み出したという設定の新人類スランの持つ非暴力的な性格に好感が持てます。

手塚治虫の初期の作品「ゼロマン」に大きな影響を与えている様な気がしますし、この作品に触発された日本のSFマンガって、何となく多そうな感じですね。

SFファンなら是非一度は読みたい名作です。